ペットフード協会の調査によれば、9割以上の家庭でペット用のフードを与えているそうです。犬は人と違い、基本的に毎日、同じ食事を食べていますので、健康を維持するためにフード選びはとても大切です。ここでは、ドッグフードとその原材料について、知っておくと良いことについてお伝えします。
1.栄養バランスのとれた食事
人と同じように、犬も、「たんぱく質」、「脂質」、「糖質(炭水化物)」、「ビタミン」、「ミネラル」の5大栄養素を必要としますが、どの栄養素もたくさん摂ればよいということではありません。
たんぱく質や脂質、炭水化物などの摂りすぎは、単に太る原因となるだけでなく、内臓や血管などの疾患を引き起こすおそれがあります。また、カルシウムとリンのように、どちらかを過剰に摂取することによって、もう一方の吸収が阻害され、欠乏症となってしまうこともありますので、栄養バランスにも気をつけなければなりません。
必要とされる栄養素をバランスよく摂るためには、総合栄養食1であるドッグフードはとても適していると言えます。
2.サプリは基本的には不要
総合栄養食を与えていれば、すでに十分な栄養素を摂れているはずですので、基本的にはビタミンやミネラル等のサプリメントを与える必要はありません。追加で与えた場合、過剰摂取となることもありますので、サプリメントを与えるべきか迷うときには、獣医師に相談するのが良いでしょう。
3.おやつは与え過ぎに注意
おやつを与える場合、与える量は一日の食事量(カロリーベース)の10%~20%までと言われますが、これは、それ以上になると栄養バランス崩してしまうためです。おやつとして与えた分だけ食事から減らさないと、カロリー過多となり、肥満の原因となってしまいます。
おやつを使ってトレーニングをする時などは、何度も与える必要が出てきますが、そのような場合は、1度に与える分量をできるだけ小さくすると良いでしょう。
4.療法食について気をつけたいこと
療法食は、特定の疾患にあるペットに合わせて栄養成分の量や比率を調整して作られたフードです。なかには与え続けると栄養が偏ってしまうものもあるため、誤った給餌による健康被害を防ぐために、必ず獣医師の指導のもとで用いるようにします。
5.フードに使われる原材料について
ドッグフードに使用されている原材料や添加物は、ペットフード安全法にもとづいて、すべてパッケージ上に表示することになっています。原則として、使用量の多い順に、分類名(肉類、穀類、ビタミン類など)か、個別名(チキン、小麦粉、ビタミンB1など)で記載されています。
<「肉類」や「ミートミール」などの表記>
原材料の表記方法としては、「肉類」や「ミートミール」のように食材の種別を特定しなくても良いことになっていますが、これですとどんな種類の肉を使用しているかわからず、特定の肉類にアレルギーを持つ犬には与えられません。概して、品質にこだわりを持つフードメーカーは、鶏肉、サーモンミールなど、具体的にその種別を明示する傾向にあると言えますので、品質に対する信頼面から、原材料について具体的に記載しているフードを選ぶのが良いでしょう。
<動物性たんぱく質と植物性たんぱく質>
たんぱく質を含む食材には、肉類や魚介類などの動物性たんぱく質を含むものと、豆類や穀類などの植物性たんぱく質を含むものがあります。ドッグフードの原材料としてよく使われるものとしては、肉類、魚介類では、チキン、ターキー、ラム、サーモンなど、豆類、穀類では、大豆やエンドウ豆など(豆類)や、小麦粉、コーングルテンなど(穀類)があります。
バランスよく栄養をとるためには、動物性たんぱく質を含む食材だけでなく、植物性たんぱく質を含む食材も欠かせません。ドッグフードでは、植物性たんぱく質を含む食材を加えることによって、必須アミノ酸やミネラル含有量を調整したり、食物繊維を補ったり、脂質を減らしたり、エネルギー量(カロリー)を調整したりしています。
ドッグフードを選ぶにあたっては、フードに含まれるタンパク質全体のうち、動物性たんぱく質が半分以上(重量比)を占めることが望ましいですが、パッケージなどにそこまで書かれていることはほとんどありませんので、目安としては、原材料の欄の最初に肉類が記載されているものを選ぶのが良いでしょう。
<ミールとは? ミールより生肉が良いの?>
ドッグフードの原材料として、「チキンミール」や「サーモンミール」などの記載を見かけることがあると思いますが、この「ミール」というのは、肉類を乾燥させて粉状にしたものを指します。食肉処理工場で発生する骨とその周辺の取り残した肉、食肉用として販売するには適さない形の悪い肉、内臓の一部などが使われることが一般的ですが、食べて健康を害するようなものが入っているわけではありません。食肉を加工する際の残り物なので品質や安全性が劣っているといったイメージを持つかもしれませんが、骨や内臓を含むため、生肉と比べるとカルシウムやリンなどが豊富に含まれていますし、加工する際に高温で加熱されるため、衛生面でのリスクが軽減されるなどのメリットがあります。
<コーティングしてある油脂>
ドライタイプのフードの多くは、油脂を表面にコーティングしています。このコーティングされている油脂は、そのフードの栄養設計上、必要とする量に含まれていますので、お湯などで洗い流したりしないようにしましょう。
<油脂の酸化 早めに使い切ること!>
フードに含まれる油脂は、大気中の酸素や光、熱などによって変質(酸化)し、風味や栄養価が損なわれていきます。酸化が進んだフードを食べることにより、下痢や腹痛などを引き起こし、体調不良につながることがあります。ドライフードは、開封後、できるだけ空気に触れないよう密封したうえで、高温多湿を避けた涼しい場所で保管するようにします。結露によるカビの発生や劣化を避けるために冷蔵庫で保管することはNGです。ソフトタイプのドライフードやセミモイストフード、ウェットフードは、常温ではカビが発生したり、腐敗が進んだりしますので、開封後は冷蔵庫で保管し、特にウェットフードについては原則、開封した日のうちに使い切るようにします。
酸化を防ぐために、ほとんどのフードには酸化防止剤が配合されています。多くの場合、ミックストコフェロールやハーブエキス、ビタミンEなどの比較的、安全性の高い天然の酸化防止剤が使われていますが、効果は限定的ですので、早めに使い切るようにしましょう。ドライフードは内容量が多いパッケージのものもありますが、2~3週間を目途に、最長でも1カ月以内には食べきれる分量のもの、または、小分けになっているものを選ぶのが良いでしょう。
6.グレインフリー/グルテンフリーのフードについて
<グレインフリーとは>
グレインフリーを謳ったフードを見かけることは多いと思います。グレインとは穀物のことですが、グレインフリーのペットフードというのは、穀物のうち、小麦、大麦、ライ麦、米、トウモロコシなどのイネ科植物を使用していないフードを指します。
<グレインフリーのフードが良い?>
グレインフリーが薦められる理由として、犬の先祖は肉食のオオカミなので穀物をうまく消化できないからと説明されることが多いようです。確かに野生のオオカミと同様に犬も、生のままの穀類をうまく消化できませんが、犬は雑食性であり、加熱調理することによって、穀物を十分に消化することができます。ドッグフードはきちんと加熱調理されていますので、食べても問題なく消化できるわけです。グレインフリーのフードが体に良くないということはありませんが、それ以外の(フレインフリーではない)フードを避ける必要はありません。
<グルテンフリーとは>
グレインフリーのフード以外に、主として小麦を原材料として含まないグルテンフリーのペットフードもあります。グルテンは麦類に含まれるたんぱく質から生成されるもので、アレルギーの原因物質になり得ることから、グルテンフリーのフードが勧められることがあります。他方、小麦粉は、チキンなどでは不足しがちな必須アミノ酸を多く含んでおり、消化率も高いため、小麦(グルテン)に対するアレルギーを持つ犬でなければ、あえてグルテンフリーのフードを与えることにメリットはありません。
- 日本国内で販売されているドッグフードは、目的や用途によって、「総合栄養食」、「間食」(おやつ)、「療法食」、「その他の目的食」(サプリメントや嗜好性を高めるためのふりかけなど)の4種類に分類されます。このうち、総合栄養食は、そのフードと水だけで必要とする栄養がまかなえるように設計され、ペットフード公正取引協議会の定める分析試験や給与試験をクリアしたものになります。 ↩︎